ならば、突然襲ってくる天災や人災から、どうすれば私たちは自分の命を守ることができるのだろうか。防災用具や、非常食を買いこむことか。それとも、安全と思われる場所に移り住むことか……。
たしかに、そうすることも難をのがれる一つの方法であることには違いない。しかし、それでも天災の規模や場所によっては、こんな小手先の回避策など、まったく役に立たないのは目に見えている。
水をさすわけではないが、防災用具があれば生き延びられると、本気で考えている人がいるのだろうか? いざというときに防災用具がどれほど役立つというのだろう。もしも生きていなければ、これらの用具を使うこともない。先の地震で奇跡的に助かった人のなかに、防災グッズのおかげで一命を取りとめたという人がいただろうか?
しかし現に、先の地震以来、飛ぶように防災用具が売れだした。人はみな生きるために防災用具が必要だと思っているのだろう。たしかに、あれば便利な側面もある。が、実際のところ、阪神大震災ほどの大地震がくれば、防災用具とて気休めていどのものにすぎないのは明らかである。
いくら耐震構造の建物であっても、いくら安全対策が施された自動車であっても、予想を超えた衝撃が加われば、ひとたまりもないことはわかりきっている。
そう考えてみれば、完ぺきな災害対策というのは、この地球上のどこにもないのである。