◇第4章 法則は厳しいが、愛そのもの
《命がけで(おも)いを正せ》

天災時代でもよろこんで生きられる

最後に、死が間近に迫っていた人で、アタマを取り一八〇度生まれ変わった人生を歩まれている方の実例を紹介したい。

つい数か月前(本書初版当時)、私のところに面談に来られた女性である。その方は子宮がんの末期で、医者もさじを投げてしまった状態で、私に会いにこられたのだ。

私はその方と対面し、「がんの原因はあなたがつくったのですよ」と、かなり手厳しいことを申しあげた。その女性の方はついに泣き出してしまったほどだった。

しかし、彼女は最後にはやっと私の言うことを理解してくれ、言われたとおりアタマを取り、みごとにがんを克服された。

その方が阪神大震災のあと、私に手紙を下さった。それにはこんなことが書かれてあった。少し長くなるが、ここに引用してみたいと思う。

「あの面談のときは失礼いたしました。私は、あのとき先生はなんとひどい人だろうと心底思いました。私は人様になんの迷惑をかけたこともないし、どちらかといえば人に善意をもって接して生きてきたと思っていましたのに……。先生は『私が悪い』と言いきられました。そのとき私にはそのほんとうの意味がわからなかったのです。先生に失礼なことばかりを申しあげましたことをお許しください。

アタマを取ったいま、私はすっかりがんが消え、前にもまして健康体で暮らしております。これも先生の厳しいけれど心温まるご指導のおかげと感謝しております。(中略)

……いまでは、先生の言われた『私の生きざまが悪い』というのは、ほんとうにそのとおりだったと痛感しております。やはり、自分にがんをつくる原因があったのですね。

今回、先生にまたすばらしいことを報告できることをうれしく思います。

じつは、私はアタマを取ってから、がんが克服できたよろこびで、このすごさを知ってもらおうと、天行力(てんぎょうりき)手帳をたくさんの親せきの人やら、知人やらに手にさせてあげていたのです。今回の阪神大震災で、被害に遭った地域(東灘区)にもそんな親類が2軒ほどありました。そして、つい先日、先方から私に電話をかけてきてくれました。

その電話で申しますには、2軒とも、家はかなり揺れ、ごちゃごちゃになったけれども不思議なことに、まわりの家が傾いたり、壊れたりしているにもかかわらず、瓦ひとつ落ちるでもなく、家は無事だった、ということでした。

やはり、これはすごいことだとつくづく感じました。(中略)

いまこうして生きているのもアタマを取ったからであることは、感謝のしようがございません。正直申しまして、これまでの私の45年の人生のなかで、あの面談のときの先生ほど、本気で叱ってくださった方はいませんでした。先生も、私の病気を察して、それこそ命がけで叱られたのだな、というのが、いま思い返してみれば、ほんとうによくわかります。

ほんとうにありがとうございました」

 

法則に沿うこと──それは、この女性の場合のように、一見厳しく無情に映るかもしれない。しかし、自分の生きざまを変えるということは、きれいごとでは済まされないものであることをわかってほしいのだ。

生きざまとは、これまで生きてきた癖であるから、その修正をすることは、一生に一度の大事行(じぎょう)である。それほど、大切なことなのだ。

そして、自分の刻んできた生きざまが、法則に沿った歩みであるかどうか、自分では判断がつかないやっかいなものである。だからその修正は、それこそ命がけなのだ。

私はこれまで数えきれないほどの人たちと接し、ありとあらゆる相談を受けてきた。それが私の使命とはいえ、一人ひとりを、法則に沿って指導していくのは、なんとたいへんなことであるかと、つくづく感じてしまう。

しかしこれは、だれかがやらねばならないことだ。その役目がこの私にあったということなのだろう。私はそう理解している。

私が面談でいちばんつらいのは、目の前の人に向かってこう申しあげなければならないときである。「あなたはいまの状態で、命を落としては絶対にいけない。このままあなたの生きざまを変えずして死ぬようなことがあったら、あなたが人間完成できないばかりか、あなたの子孫はみな足をすくわれる」

 

何度も申しあげよう。あなたの人生は、あなた一人のための人生ではないのだ。あなたの子孫、そして先祖、さらにいまなぜか同時に人間としてこの世に生きている56億(本書初版当時)もの人類すべてのために、あなたは生かされているのだ。

もはや時間がない。

天変地異は規模と頻度を拡大し、全地球を覆っていくかもしれない。それでも、あなたはよろこびのうちに人生を生き抜かねばならない。たとえ、このような厳しい環境におかれても、人間としてあることを心底よろこび、人生をまっとうしなければならない。それがあなたの使命なのだ。

そのためにも、天災で命を落とすなど、決してあってはいけないことだ。

だから、アタマを取り、生きざまを変える。そして、天災時代のなかにあっても、よろこびの生活を歩んでほしい。このことがひいては他の多くの人を救うことに直結しているのだから。